JAN!ライフスタイルY.S.C.C.吉野会長が語る「クラブの原点と未来」

本牧地域と歩む40年。Y.S.C.C.吉野会長が語る「クラブの原点と未来」

本牧地域と歩む40年。Y.S.C.C.吉野会長が語る「クラブの原点と未来」の画像1
取材は8月中旬に実施。吉野次郎氏は設立40周年を迎えたY.S.C.C.の展望を熱く語った。
この記事の画像(5枚)

 2026年8月30日(日)、設立40周年を迎えるY.S.C.C.(横浜スポーツ&カルチャークラブ)が、J3復帰に向けた重要な開幕戦を迎える。 「1万人動員計画」を掲げ、熱気を帯びるクラブの裏側には、どのような物語があるのか。 企業主導ではなく、あくまで「地域主導」を貫いてきた40年の歩みと、これからの展望について、24歳の頃からクラブを牽引し、現在は会長を務める吉野次郎氏に話を聞いた。

【目次】
■「三位一体」でつくる子どもの居場所
■フェンスの向こうのアメリカと、多世代が交わるクラブ
■スポーツを通じた人間形成と、街の課題解決
■J3再挑戦へ。1万人動員への熱意

「三位一体」でつくる子どもの居場所

本牧地域と歩む40年。Y.S.C.C.吉野会長が語る「クラブの原点と未来」の画像3
「地域はファミリー」のアットホームなクラブ。

——まずは、クラブ設立の経緯について教えてください。Y.S.C.C.はどのようにして生まれたのでしょうか。

「僕が大学2年の時に、所属していたスポーツクラブが企業主導になり始めたんです。企業が参画して強くはなっていったけれど、ちょっと違う路線でいきたいなと。その『違う路線』というのは、やっぱり地域とともにということ。それから、子どもたちの健全育成と、大人の心と体の健康を目的とすることでした」  

吉野会長が語るように、Y.S.C.C.の根本には「地域」と「子ども」という確固たるキーワードが存在する。1986年の設立当時の日本は、子ども同士のいじめや自殺といった社会課題が深刻化していた時代でもあった。  

「1985年は『いじめ自殺元年』と言われた年だったんですよ。だから86年にクラブが立ち上がった時、子どもたちの居場所を、学校と家庭とは違うところで作れないかと考えました。地域スポーツに関わる大人たちが、学校と家庭と三位一体となって子どもたちの居場所を作る。スポーツを通して子どもたちの居場所を作ることで、少しでも悲しい出来事を防げたらいいよね、というところから始まっています」 

——家庭でも学校でもない「サードプレイス」の概念を、その時代からスポーツクラブが担っていたんですね。

「そうなんです。思春期の中学生って、親や学校の言うことは聞かなくなるんですけど、なぜかサッカーが上手な先生の言うことは聞いてくれるのですよね。だから、大好きなスポーツを通して、広く言えば『人間形成をしていきましょう』というスタンスは当初からありました」  

フェンスの向こうのアメリカと、多世代が交わるクラブ

本牧という土地柄も、クラブのアイデンティティに深く影響を与えている。 かつてアメリカ軍の居住区があったこの地で、吉野会長自身も特有の文化に触れて育った。

「1982年までこの土地には、アメリカ軍のご家族が生活するエリアがありました。フェンスで区切られた向こう側にあったアメリカの野球文化、緑色のフィールドを眺めながら『あそこで野球やりたいな』という思いがあって。スポーツが生活の中に文化として根付いている姿への憧れがありました」  

——そうした憧れが、現在のY.S.C.C.の「多世代型クラブ」という特徴に繋がっているのでしょうか。現在では幼稚園児から60歳以上まで、非常に幅広い年代の方が所属されていますよね。

「ええ。設立時のY.S.C.C.の『C.C.』はカルチャークラブの意味で、スポーツだけじゃない、文化や教養も高めましょうという意味を込めていました。その時代ごとに必要なことをやってきたら、これだけカテゴリーが増えたんです。トップチームがあって、その下にセカンドチームがあり、さらに高校、中学、小学、幼稚園、そして30代から60代まで。ここまで日本サッカー協会に登録しているカテゴリー数を確保しているクラブは他にないと思います」

スポーツを通じた人間形成と、街の課題解決


——吉野会長は、子どもたちの人間形成を非常に大切にされていますよね。具体的にどのようなことを伝えられているのでしょうか。

「やっぱり、感情豊かであってほしいんです。日本人の文化として、一緒に何らかの活動をするグループでも、熱狂的にハグをするほど感情を分かち合うことはあまりないですよね。しかし、スポーツはそれを可能にするんです。泣きたい時に泣けばいいし、苦しいなら苦しいと言えばいい。笑いたいならゲラゲラ笑えばいい。今は閉塞感の中で子どもたちが生きているように見えるからこそ、嘘偽りなく自分を表現しろ、と伝えています」  

その眼差しは、クラブ内だけでなく、地域の課題解決にも向けられている。  

「寿町での健康教室を10年以上続けたり、神奈川区の耕作放棄地でクラブ所属の選手がファームを運営したりしています。 街の中にある課題をキャッチして、自分たちでできることをやっていく。例えば今度、中学生たちとジャガイモを植えて、収穫したものを12月のホームゲームで売ろうと計画しているんです」  

本牧地域と歩む40年。Y.S.C.C.吉野会長が語る「クラブの原点と未来」の画像4
Y.S.C.C.横浜が取り組む「Y.S.C.C.ファーム」。選手自らが農業指導を受けながら耕作放棄地を蘇らせるプロジェクトだ。

——農業体験を通して、地域と関わっていくということでしょうか。

「実はこの取り組みも、子どもたちに社会と関わっていくうえで大切なことを学んでもらうことを目標としたものです。例えば、子どもたちが集団行動の中で、お金の貸し借りをしたとする。するとどうしてもトラブルが出てくるんですね。その時に、そうした行為をただ禁止するんじゃなくて、自分たちで作ったものを売って、お金がどう巡ってくるのかを体験させたいんです。お金を得るありがたみがわかれば、『借りたら絶対に返さなきゃいけないね』『貸してくれた人がいるんだから』ということが実感として理解できるはず。 そういう生きたマネー教育をやろうと提案しています」  

ただ頭ごなしに「ダメだ」と叱りつけるのではなく、なぜいけないのかを自らの体験を通して感じさせる。 現場でのリアルな経験を何よりも大切にする吉野会長の「教え育む」姿勢が、このエピソードから色濃く伝わってくる。  

——そうした地域への貢献や教育活動は、どのように運営されているのでしょうか。

「あまり褒められたことではないと思うのですが、いまだにそういったことを手弁当でやっているんですよ。だから、これにスポンサーをたくさんつけたいなというのが、今日の一番のお願いでございます(笑)」 

冗談めかして笑う吉野会長だが、その裏にある想いは真剣そのものだ。地域貢献をひとつの民間企業が自己負担で行うというのは、決して簡単ではないはずだ。楽ではない状況でも、なぜそこまでして地域のために動くのだろうか。 

「それは、私たちの地域にある課題だからです。街の中にある、課題を抱えたエリアに対する自分たちなりの恩返しの一環です。Y.S.C.C.は街の課題をキャッチして、自分たちでできることを積み上げてきました。これはY.S.C.C.のアイデンティティでもありあす」  

本牧地域と歩む40年。Y.S.C.C.吉野会長が語る「クラブの原点と未来」の画像2
取材を通じて最も印象的だったのは、クラブ経営を通じてさまざまな形で地域に貢献したいという、吉野会長の想いだった。

損得勘定ではなく「地域に必要だからやる」。 そのブレない信念が、クラブを40年という長い歴史へと導いてきたのだろう。

J3再挑戦へ。1万人動員への熱意

本牧地域と歩む40年。Y.S.C.C.吉野会長が語る「クラブの原点と未来」の画像5
サポーターたちとともに、再びJ3へ!

——設立40周年という節目を迎える今シーズン、J3への復帰に向けた強い思いを聞かせてください。開幕戦では「1万人動員計画」も掲げられていますね。

「この1年でJ3に復帰しましょう、というのが現在の内部での共通ワードです。 やはりJリーグというのは一つのブランドであり、街の人たちに『自分たちの特別なんだ街はなんだ』と感じてもらえる契機でもあるんですだからこそ、8月30日の開幕戦、40周年記念マッチでは1万人動員を達成したい。来場者にはベースボールシャツをプレゼントする企画も進めています。ファッション性も重視した素敵なシャツなので、ぜひ皆さんにスタジアムへ足を運んでほしいですね」

——最後に、本牧の人々、そしてY.S.C.C.を応援する方々へメッセージをお願いします。

「キーワードは『横浜から世界へ』ですが、その手前にある『本牧から横浜、横浜から世界へ』というステップを大事にしています。 次の10年に向かって、組織も地域の方々も一緒になって健全な心を育んでいく。スポーツを通して、明るく元気で、人を排除しない、懐の深いクラブを作っていきたいと思っています」  

取材で訪れたYC&ACでは、Y.S.C.C.の選手らが練習するコートの横で、小学生たちの元気な声が響いていた。地域主体のチームとはこういうことかと、その光景から肌で感じることができた。

吉野会長はしきりに「必要なことをやっていたらここまで事業が広がった」と話すが、それを自らの手でやり遂げられる人間が一体どれほどいるだろうか。地域の課題をキャッチするアンテナと人との繋がりを大切にし、自分たちの力で何ができるかを常に考え行動する。その真摯な姿勢こそが、彼らが地域から愛される一番の理由なのだと感じた。

また、1万人動員の入場特典として、サッカークラブでありながら「ベースボールシャツ」をプレゼントするというアイデアにも驚かされた。常識にとらわれず、ジャンルの壁を作らない柔軟でユニークな発想も、このクラブの魅力の一つだろう。

「このチームを応援したいな」。取材を終えた帰り道、自然とそんな思いが胸に湧き上がっていた。

【Y.S.C.C.ホームページ】
https://www.yscc1986.net

行くぞJリーグ史上最大ミッション1万人】
https://www.yscc1986.net/info/23315

【JFL開幕戦 8月30日FCティアモ枚方戦 チケット購入
https://ticket.yscc1986.net/matches/69dd77b1-15d6-41fb-a708-1f2a1a7069a2#purchase

シェアする
みなと あみ

埼玉県在住。日本大学文芸学科卒。アイドル、邦楽ロックどんと来い!好きなライブハウスは横浜1000 CLUBだったが、2026年9月30日で閉館ということで、新たに好きな箱を探し中。みなとみらいでは「minato coffee」に必ず立ち寄る。

ページTOPに戻る