JAN!グルメ保土ヶ谷かながわアートホールにカフェ

保土ヶ谷かながわアートホールにカフェ誕生。文化の交差点『森乃音茶寮MOCO』

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かながわアートホールに新しく誕生!
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保土ケ谷公園の豊かな緑に囲まれた「かながわアートホール」。その1階にあるレストラン跡地に、2026年6月、新しいカフェ『森乃音茶寮MOCO(もりのねさりょう モコ)』がオープンしました。

店主の佐藤さんは、長年演劇の世界に身を置き、舞台照明としても活動してきた異色の経歴の持ち主です。

夫婦ではじめたこの小さな茶寮には、表現者としての原体験と、地域コミュニティへの静かな熱意が込められていました。

【目次】
舞台裏からカフェの道へ人生の転機
夫婦の手仕事で再生した店内
保土ケ谷の自然を楽しむカフェ
表現者がつながる「カルチャーのコワーキング」
身体を労わるカレーと、素材にこだわる焼き菓子
店舗情報

舞台裏からカフェの道へ。

店主の佐藤さんは、58年間ずっと横浜で暮らしてきた生粋の浜っ子です。

これまでの職歴は多岐にわたり、直近では舞台の照明担当として裏方から文化を支えてきました。

そして同時に、佐藤さん自身も40年以上にわたり劇団を主宰し、一時は神奈川県演劇連盟の理事長を務めるほどの「根っからの演劇人」でもあります。

そんな佐藤さんに大きな転機が訪れたのは、数年前のことでした。

「心臓の大きな手術をしまして。大動脈人工血管置換手術を同時に行ったんです」

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演劇人でもある佐藤さん(左)と元アパレルのデザイナーだったMOCOさん(→)

命に関わる病を経験したことで、佐藤さんは自分の人生を見つめ直します。時を同じくして、元アパレルのデザイナーだったパートナーのMOCOさんが、コロナ禍の希望退職を機に「前々から準備を進めていた」というカフェの道へ進み、反町で自家焙煎コーヒーを出す1号店『Cafe de Moco』を立ち上げていました。

佐藤さん自身も、演劇を通じて「人が集まり、文化が交わる場所をいつか作りたい」と常に考えていたそう。そんな折に目に入ったのが、かながわアートホールでのレストラン跡地の公募だったのです。

「知る人は知っている場所ですし、ここなら自分がやりたい文化の交流の場ができるんじゃないかと思って、やらない手はないと手を挙げました」

夫婦の手仕事で再生したカフェ

無事に、借りられるようになったものの、6月17日のオープンに向けて与えられた準備期間は、わずか2ヶ月ほどでした。以前のレストランが残していった内装は重厚感があり、古き良き時代の雰囲気を色濃く残すものでしたが、佐藤さんが目指したのは「外の緑とつながる、明るく開放的なカフェ空間」でした。

予算や時間の制約がある中、佐藤さんは持ち前の「舞台職人の技術」を活かし、DIYで空間を作り変えていくことに決めます。

「壁や天井はすべて、芝居仲間の職人さんに新しく張り替えていただきました。床も少し傷んでいたので、全部トリートメントしてね。前のオーナーさんが使っていたテーブルも譲り受けたのですが、店内の雰囲気を統一するために、足の部分だけアイアン風に塗り直したりしました」

かつて舞台の照明を操っていた経験を活かし、照明器具もカフェに馴染む柔らかなものへと変更。窓にかけられていたカーテンは、スライドタイプに変え、外に見える森の景色を遮らないように工夫しました。

店内を飾る可愛らしい雑貨や小物は、アパレル会社の服飾・雑貨企画提案の部署にいたパートナーのMOCOさんのセンスによるものだそうです。舞台の裏方として培った佐藤さんの施工技術と、MOCOさんのデザインセンスという、お互いの強みがカチッと噛み合い、外の森と地続きのような心地よい空間が完成しました。

保土ケ谷の自然を楽しむカフェに

『森乃音茶寮MOCO』という店名には、この場所だからこその意味が込められています。

「かながわアートホールは普段から音楽ホールとして利用されているので、まずは音楽を嗜む方が集まる場所という意味で『音』という字を入れました。それと、実際にお店の外に出ると、本当にいろんな鳥の鳴き声が聞こえるんです。リスが走っていたりするんです。そんな自然の音を感じてほしくて『森乃音』と名付けました」

窓際に設置されたカウンター席には、モバイル用の電源とともに、さりげなくスマホホルダーが設置されています。現代の生活に配慮した設備ですが、佐藤さんには少し天邪鬼な願いもあると言います。

「スマホを立てられるようにはしていますが、できればここではスマホを見るんじゃなくて、窓の外の木々を眺めたり、池の波紋を見たりしてほしい。現代人が少し忘れてしまっているかもしれない自然に、ふと触れる時間にしてもらえたら嬉しいですね」

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水がせせらぐ建物内部ビューも癒しです

また、ここであえて「カフェ」ではなく「茶寮」という言葉を選んだのは、1号店とは異なる役割を持たせたかったからだそうです。

自家焙煎コーヒーが主力の本店に対し、こだわりの紅茶やヘルシーなフードなど、少し多めのメニューを取り揃えています。

「ホールでコンサートや演劇を観たあとに、お客さん同士が立ち寄って、余韻に浸りながら感想を言い合えるような、そんな『お茶の場』にしたいという思いを込めて『茶寮』にしました」

表現者がつながる「カルチャーのコワーキング」スペース

かつて保土ケ谷区に12年ほど住んでいたという佐藤さんは、この地域の持つ絶妙な距離感を気に入っているそう。中区や西区のような近代的なみなとみらいの風景も素敵ですが、一歩裏手に入ればホタルが生息するような清流がある保土ケ谷は、「都会すぎず、田舎すぎない、文化が交わる拠点としてちょうどいい場所」なのだと言います。

しかし同時に、演劇人としてこの素晴らしい「かながわアートホール」の認知度が、一般にそれほど高くないことをもったいなく感じていました。

「ここには300人が入れるホールのほかに、数人で使える小さな練習室から50人が入れる大きな練習室まで揃っています。音楽や表現をやる人間にとっては最高の環境なのですが、夜になると施設周辺が真っ暗になることもあって、意外と近所の人でも中身を知らなかったりするんです」

だからこそ、このカフェがホールの入り口としての役割を果たせればと考えています。

「全然違う目的でふらっとカフェに来た方が、『あ、上にこんな練習場やホールがあるんだ』と知って、今度は表現する側として使ってくれるようになったら面白いですよね」

そんな佐藤さんの頭の中には、1980年代の小劇場ブームの頃の原体験がありました。

当時、横浜の劇場に集まった異なる劇団同士が、横のつながりを持ってひとつの大きな企画を作り上げ、佐藤さん自身も大きな刺激を受けました。

「ゆくゆくは、ここで詩の朗読や絵本の読み聞かせ、アコースティックのミニライブなども仕掛けていきたい。異なるジャンルのクリエイターたちがこのカフェで出会い、『今度一緒に何かやろうよ』とつながっていくような、カルチャー版のコワーキングスペースのようになったら楽しいですね」

身体を労わるカレーと、素材にこだわる焼き菓子

そんな佐藤さんが厨房で腕を振るうフードメニューにも、独自のこだわりが光っています。看板メニューの一つが、じっくり煮込まれた「無水カレー」です。

「水を入れないだけでなく、実は油も一切使っていないんです。鍋にトマトやナス、きのこを敷き詰めて、カレー粉を足して野菜の水分だけで作ります。炒める工程を挟まないので、お肉の油が出るくらいで非常にヘルシーなんです

大きめのボリュームですが、実際に食べた年配のお客様からも「くどくないから、最後までペロリと食べられたよ」と好評を得ています。洗い物をする際にも環境に負荷をかけないという、佐藤さんのこだわりが詰まった一品です。

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こだわりパンにピンクパッパーがアクセント。

さらにこれからの季節には、特製ドレッシングで和えたスライスきゅうりをたっぷり挟んだ、「きゅうりだけサンド」も、さっぱりと食べられるメニューとして並びます。

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ホームメイド感ある焼き菓子がやさしい

ここで、店頭に並ぶ焼き菓子について、一号店の経営もしている妻のMOCOさんにもお話を伺いました。

「焼き菓子は、本店でも使用している製造方法をこちらでも再現しています。食べてくださる方の身体のことを考えて、米粉などを多く使用し、添加物を使わないお菓子にしています。オートミールを使ったお菓子などもあります」(MOCOさん)

提供されるメニューはどれも身体に優しく、穏やかな味わいを持っています。

大きな窓から差し込む木漏れ日の中で、自家焙煎の珈琲や身体に優しいお菓子を味わう。かながわアートホールに新しく灯った『森乃音茶寮MOCO』は、単なる休憩所ではなく、訪れる人の心と、地域のカルチャーを静かにつなぐ、温かな交差点になりつつあります。

【店舗情報】

森乃音茶寮MOCO(もりのねさりょう モコ)
住所: 神奈川県横浜市保土ケ谷区花見台4-2(県立保土ケ谷公園内 かながわアートホール1F)
アクセス: JR保土ケ谷駅または相鉄線星川駅よりバス、「明神前」バス停下車徒歩など
営業時間・定休日: かながわアートホールの休館日・スケジュールに準ずる(詳細は公式SNSをご確認ください)

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大沢野八千代

1983生まれ。横浜の対岸の千葉市で、横浜ナンバーに憧れを抱いて育ったフリーランスの編集者・ライター。ハマスタでササカマにかじりついているところをテレビ中継で抜かれ、家族から指摘された過去を持つ。Googleマップのランクは7。

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