JAN!ライフスタイル横浜の壁画アートシーンはなぜ熱い?

横浜の壁画アートシーンはなぜ熱い?ガーデングローブ代表に聞く横浜のアートと街作り

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アトリエにはダイナミックなピースが!
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街を歩いているとふと目に飛び込んでくる、ダイナミックで色鮮やかな壁画(ミューラルアート)。

横浜のストリートや商業施設、公共空間で数々のアートワークやクリエイティブを手がけているのが、横浜を拠点とする「ガーデングローブ合同会社」です。

今回は、同社代表社員の佐藤航さん(通称:バルさん)にインタビュー。音楽業界からアートの世界へ飛び込んだ経緯から、近年広がりを見せる多彩な活動、横浜と壁画アートの深い関係、そしてこれからの展望まで、熱い想いを語っていただきました。

【目次】
■クリエイターと街を繋ぐ「アーティストエージェンシー」
■コロナ禍を経て壁画の需要が加速 「ラポール」との取り組み
■音楽とアートの両輪で横浜を盛り上げる
■横浜に刻まれた「壁画がある風景」
■若い世代が集まり、アートが「当たり前」にある横浜へ

クリエイターと街を繋ぐ「アーティストエージェンシー」

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壁面にもアートがあしらわれた外観。

ーーまずはじめに、ガーデングローブとはどのような会社なのでしょうか?

佐藤航さん/通称:バルさん(以下、バル):ひと言で言うと、壁画家を中心とした「アーティスト/クリエイターエージェンシー」です。壁画家だけでなく、映像作家、DJ、舞台装飾家といった多彩なクリエイターたちと共に、街中の壁画制作や店舗・空間の演出、イベントなどをチームで形にしています。事務所としてガチガチの契約で縛るのではなく、アーティストそれぞれの距離感や制作スタイルに合わせた“緩やかな関係性”を大切にしながら、活動をサポートしています。

事業の柱は「壁画事業」「ワークショップ事業」「イベント事業」の3つです。作品やグッズの物販は別ブランド「GT Lab」が担っていて、ガーデングローブはアート/音楽を通した「まちづくり」や「体験」の提供に特化して活動しています。

これまでの具体的な取り組みとして、2024年と2025年にビブレ横五段坂を巨大なアートで彩った『横浜西口アートプロジェクト2024〜YNAP〜』、横浜港大さん橋リニューアルオープン20周年を記念した22年から続く『大さん橋ライブペイント』、今年5月には商店街を活性化させる吉田町の壁画アートなど、横浜の日常空間に溶け込む多彩なプロジェクトを手がけています。

吉田町に誕生!令和ロマンが横浜を彩る壁画アートに


コロナ禍を経て壁画の需要が加速 「ラポール」との取り組み

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ーー近年、商業施設や街なかなど、横浜市内を歩いていてガーデングローブさんの手がけるアートを見かけることも増えてきたと思います。

バル:実は、コロナ禍が大きな転換点になりました。音楽イベントが一斉にできなくなった時、「壁画なら屋外で密にならずに描けるし、素晴らしいものが残る」と企業や商業施設からご相談をいただくようになったんです。壁画って、描けば描くほどそれ自体が宣伝媒体になるので「うちの店にも描いてほしい」と声がかかり、横浜ビールさんや飲食店、商業施設へと連鎖していきました。

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また、街との繋がりという意味で大きいのが、障害者スポーツ文化センター「横浜ラポール」さんとの取り組みです。障害がある子どもたちと毎年『巨大壁画ワークショップ』を開催し、もう7年ほど続けています。150人規模の募集が毎回すぐに満員になるほどで、完成した作品は毎年12月に横浜市庁舎に展示しています。子どもたちが思いのままに色を塗ってから、プロのアーティストが半透明の塗料を重ねて仕上げることで、「自分が描いた」と誇りを持てる工夫をしています。

最近では横浜だけでなく、川崎市での壁画アートや全国的に新設され始めたスケートパークの壁画制作やイベントプロデュースなども増えてきました。

音楽とアートの両輪で横浜を盛り上げる

ーーそんなガーデングローブの成り立ちについて教えてください。

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その手から、鮮やかなアートを生み出し続けるバルさん

バル:僕の地元は横須賀なんですけど、昔からプレイヤーではなく、裏方をするのが大好きでした。大学時代に先輩バンドのツアースタッフをしていた流れで、SNAIL RAMPやBOOM BOOM SATELLITESが所属していた音楽事務所「ジャグラー」に入り、がむしゃらにバンドのマネージャーをしていました。

その後、レゲエシンガーのRickie-Gのマネジメントを始め、08年に「GardenGrove」の屋号でオーストラリアでイベントを立ち上げた後、横浜に拠点を移して独立したんです。「ガーデングローブ(Garden Grove)」という社名は、昔から好きだったカリフォルニアのバンド「Sublime」の曲名から取っています。

特に大きかったのは、Rickie-Gのマネジメントを手がける中で、CDジャケットを描いてくれた画家の「Dragon76」と出会ったことです。彼のマネジメントも引き受けたことで、音楽とアートの両輪で動く体制になっていきました。横浜・鶴屋町のレストランバー「GRASSROOTS」でDragon76主催で毎月ライブペイントイベントを開催したり、大さん橋全体を使った国内最大級のハワイアンフェス『ALOHA YOKOHAMA』と連携する形で、自ら音楽フェス『Pacific Roots Fest』を3年間にわたって主催しました。そのご縁から大型商業施設のアートワークなども担当するようになり、16年に法人化して、今年でちょうど会社設立10年になります。

横浜に刻まれた「壁画がある風景」

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ーー横浜といえば桜木町の高架下(08年にすべて消去)に代表されるように、古くからグラフィティやストリートカルチャーと縁の深い街です。一方で、かつてのグラフィティは違法性や落書きという側面と常に隣り合わせでした。ガーデングローブさんの取り組みは、そうしたカルチャーを公共性のある表現へと昇華させているようにも感じられますが、横浜という街と壁画アートの関係をどのように捉えていますか?

バル:やはり横浜には、70〜80年代から横浜博覧会やみなとみらい地区などで作品を手がけ、街に壁画カルチャーを根付かせたアーティスト、ロコ・サトシさんの存在や、桜木町の高架下壁画の記憶があります。桜木町の壁画も、イリーガルな落書きという問題を孕みつつも、街を行き交う人々の記憶に鮮烈に残っていました。そうしたカルチャーの歴史を経てきたからこそ、市民の心のどこかに「壁画がある風景」をごく自然に受け入れる豊かな土壌が確かにあると思うんです。

一方で、正式なプロジェクトとして街にアートを展開しようとすると、昭和24年にできた屋外広告物条例(壁面の3分の1までしか描けない等)や景観規制の壁が高く、現状では表現のハードルが高いのも事実です。例えば近隣の川崎市では、行政がダンスやBMX、スケボーといったユースカルチャーを街の活力として後押しし、プロポーザル(公募型提案)で壁画を発注してくれるような柔軟な仕組みがあります。横浜でも、熱い想いを持つ各区役所の方や学校現場などとタッグを組んで、少しずつ道を切り拓いているところです。

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あと、ビルの外壁は何年かに一度、必ず塗り替え工事を行いますよね。壁画はその外壁塗装とまったく同じ塗料を使って描いています。これによって何かできるかというと、ビルのオーナーさんや商業施設にとって捻出するハードルの高いプロモーション費ではなく、定期的に発生する「修繕工事費」の枠組みの中で、ビルの美化とアート化を同時に実現できるんです。しかも、現状復帰も簡単です。街を彩りながら企業側にもしっかりメリットがある、そうした持続可能で合理的なアプローチも積極的に提案しています。

若い世代が集まり、アートが「当たり前」にある横浜へ

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アトリエにはストリート仕込みのアートがずらり。

ーー改めて、佐藤さんにとって「横浜」とはどのような街ですか?

バル:横浜は本当にアーティストが多い街で、今、10代〜20代の若い絵描きたちが続々と集まってきています。ストリートカルチャーの歴史があり、美術館や大学もある。何より、吉田町や石川町、新横浜といった商店街や地元の若い担い手たちが「アートで街を面白くしたい」と本気で動いているんです。だからこそ、ガーデングローブの活動を通じて、次の世代に「アートでちゃんと飯が食えるんだ」という夢と環境を残していきたい。その基盤を整えるのが僕の役目だと思っています。

今後、「アート特区」や壁面の指定管理のような仕組みができれば、横浜は街全体が世界に誇れる「街中美術館」になれる圧倒的なポテンシャルを秘めていると思います。なので、横浜の街中でアートを描かせていただける「いい壁」も常に募集中です(笑)。

アートが美術館の中だけの敷居が高いものではなく、日常の風景として「当たり前」にある街にしていきたい。実際、僕たちが壁画を制作していても、散歩中の人が足を止めたり、親子の会話が弾んだり、ご近所さんが絵描きにコーヒーを差し入れしてくれたりするんです。アートを通して人と人とのコミュニケーションが生まれる、そんな温かい街づくりにこれからも貢献していきます。

ガーデングローブ合同会社(GardenGroveLLC.)
代表社員:佐藤航
設立:2016年
事業内容:壁画事業、アートワークショップ事業、イベント企画制作、アーティストマネジメント
公式サイト:https://garden-grove.biz
公式Instagram:https://www.instagram.com/gardengrove.artmusic

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須賀原みち

神奈川県出身、フリーの編集・ライター。学生時代は『saku saku』(あかぎあい時代)や『ミュージックトマトJAPAN(ミュートマジャパン)』、『Live y』(いずれもtvk)を観て育った。「F.A.D YOKOHAMA」が初めて行ったライブハウス然としたライブハウス。

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