JAN!イベント金沢高等学校チアダンス部3.4kmのパレードに込める

金沢高等学校チアダンス部が3.4kmのパレードに込める「最後の一瞬」

横浜市立金沢高等学校チアダンス部「WINNERS 」
横浜市立金沢高等学校チアダンス部「WINNERS 」(写真・©湘南ユナイテッドBC)


 横浜の初夏の訪れを告げる、ゴールデンウィーク恒例の祭典「開港記念みなと祭 ザよこはまパレード| 国際仮装行列」。華やかな音楽隊やフロートが山下公園から伊勢佐木町までを練り歩くこの大イベントにおいて、ひときわ眩しい笑顔と、統制のとれたダイナミックなダンスで沿道の視線を釘付けにするチームがある。

 それが横浜市立金沢高等学校チアダンス部「WINNERS(ウィナーズ)」だ。

 昨年全国大会に出場した彼女たちにとって、このパレードは単なる出演イベントではない。それは、3年間の部活動の集大成であり、実質的な「引退の舞台」なのだ。今回、本番を目前に控えた3年生の小野さん、佐藤さん、村上さんそして顧問の楠先生に話を伺った。

 知らなかったパレードが「一生の思い出」に変わるまで

 横浜で生まれ育った「ハマっ子」である彼女たち。しかし意外にも、高校に入るまでパレードの詳細を知っていたわけではなかったという。

「生まれてから入部するまで、パレードのことは全く知りませんでした。入部してから年間行事を見て初めて知ったんです」と語るのは村上さん。母親に伝えると「実は小さい頃にパレードに連れて行ったことがあるんだよ」と教えられたが、本人の記憶にはなかった。

 佐藤さんも同様だ。

「パレードの存在は知っていましたが、まさか自分が出る側になるとは思っていませんでした。でも、出演が決まったことを祖父母に伝えたら、ものすごく喜んでくれて。その時、横浜パレードってこんなにすごい、街の人に愛されているイベントなんだって改めて気づかされました」

 10代の彼女たちにとって、歴史ある「横浜パレード」は、自分たちの活動を通して初めて「自分事」として繋がった、横浜という街との最初の接点だったのだ。

伝統のバトンを繋ぐ、横浜税関との絆

 金沢高等学校WINNERSのパレード出演には、特筆すべき点がある。「横浜税関」の音楽隊とタッグを組んで出演していることだ。

 顧問の楠先生はこう説明する。

「私たちは横浜税関音楽隊の皆さんの演奏に合わせて踊るチームとして毎年参加させていただいています。だからこそ、税関さんの名に恥じない、そして金沢高等学校の伝統を汚さない演技をしなければならないという、心地よいプレッシャーが常にあります」

 本番前には、実際に税関を訪れての合同練習(プリプロ)も行われる。生演奏の迫力と、自分たちのダンスが一つになる瞬間。そこには、学校の枠を超えた「横浜を代表して歩く」というプライドが芽生える。

「3.4km」という過酷な舞台裏にあるもの

金沢高等学校チアダンス部が3.4kmのパレードに込める「最後の一瞬」の画像2
ほとばしる青春を目に焼き付けろ!
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 パレードの総延長は約3.4km。華やかな笑顔の裏側で、彼女たちは過酷な身体的負担と戦っている。

 「1年生の時が一番きつかったです」と笑いながら話すのは小野さん。1年生はまだユニフォームを着て踊ることはできず、先輩たちの水筒が5〜6本入った重いカバンを抱えて横を歩くサポート役に徹する。

 2年生になり、ようやく憧れのユニフォームで踊れるようになっても、3.4kmを全力で踊り続けるのは並大抵のことではない。

「普段の大会は室内で2分間、全力を出し切る競技です。でもパレードは、進みながら、移動しながら、ずっと笑顔を絶やさず踊り続けなければなりません」と楠先生。

 それでも、彼女たちの足が止まることはない。その原動力は「観客との距離」だ。

「大会の時は、審査員席や観客席が遠く、どこか『見られている』という緊張感があります。でもパレードは、手を伸ばせば届きそうな距離にお客さんがいる。目が合うと、お互いに笑顔が伝染していくのがわかるんです。それが力になります」

 なお、同部には今年も10名もの新入生が入部したそう。彼女たちもまた、過酷な3.4kmを経験し、やがては3年生になっていくだろう。

運命の「伊勢佐木町」で見せる青春の輝き

 取材中、もっとも印象的だったのは佐藤さんが語った「伊勢佐木町」でのエピソードだ。

「2年間歩いてきて、ルートを覚えてくると、伊勢佐木町に入って道が狭くなる瞬間があるんです。そうすると、『ああ、もうすぐ終わっちゃうんだ』って。それまでは体力的にも正直しんどいと思う瞬間もあるんですけど、終わりが近づいているのを感じた瞬間、もっと楽しもうっていうマインドに変わるんです」

 WINNERSにとって、パレードが終わることは、3年生としての活動が幕を閉じることを意味する。かつてはパレード当日が引退の日であり、解散後に全員で号泣しながら食事に行くのが恒例だったという。現在は5月に校内での引退公演があるものの、街の人々に向けた「外に向けた活動」としては、パレードが正真正銘のラストステージだ。

 狭くなる道、迫りくるゴール。そこは彼女たちにとって、3年間の青春を噛みしめる「ラストラン」の光景なのだ。

 チアの誇り、自分たちで作る「感謝のカタチ」

 WINNERSのモットーは「常に感謝の気持ちを忘れず、見ている人に元気を与えること」

 今回のパレードの見どころの一つは、3年生自身が考案した振り付けだ。チアダンス特有のパキパキとした素早い動き、そして太陽の光を反射して輝くポンポンの揃った動き。小野さんは「自分たちが一から作った振りだからこそ、そのキラキラした姿を見てほしい」と胸を張る。

「チアは、自分が楽しんでいないと相手に元気を届けられません。だからまずは自分たちが全力で楽しむ。それが街の人への一番の恩返しになると思っています」

 取材の最後、横浜という街について聞くと、彼女たちは口を揃えて「横浜が大好き」だと答えた。

「他の街に行っても、やっぱり横浜に戻ってくると安心する。大人になってもずっとここにいたい」

 自分たちが生まれ育ち、これからも生きていく街のメインストリートを、青春の絶頂にいる今、最高の仲間と、最高の笑顔で駆け抜ける。

5月3日、彼女たちの「今」を見届けてほしい

 金沢高等学校WINNERSのパレードには、一瞬の火花のような美しさがある。

 それは、何十年と続く伝統の重みの上に、今この瞬間にしか存在しない「彼女たちの青春」が乗っているからだ。

「高校3年間という短い期間の、青春の輝かしさを見てほしい」と語った佐藤さんの言葉通り、沿道で彼女たちを見かける時間は、パレード全体のほんの一瞬かもしれない。しかし、その一瞬のために、彼女たちは週5日の厳しい練習を積み、3.4kmの道のりを笑顔で完走する。

 2026年5月3日、横浜の街が熱気に包まれるその日、ぜひ伊勢佐木町の沿道に立ってみてほしい。
そこには、自分たちの街を愛し、チアの誇りを胸に、一生消えない思い出を刻もうとする少女たちの、眩いばかりの「最後の一瞬」が輝いているはずだ。

(プロフィール)
金沢高等学校チアダンス部 WINNERS(ウィナーズ)
横浜市立金沢高等学校の部活動として活動する、日本屈指の実力派チアダンスチーム。国内の大会で数々の優勝・入賞実績を持つ。 「常に感謝の気持ちを忘れず、見ている人に元気を与える」をモットーに、技術だけでなくチアスピリットを追求。毎年GWに開催される「開港記念みなと祭 ザよこはまパレード(国際仮装行列)」には横浜税関音楽隊と共に長年出演しており、地元・横浜に根ざした活動を大切にしている。
URL:https://www.edu.city.yokohama.lg.jp/school/hs/kanazawa/index.cfm/22,0,90,html

(イベント紹介)
開港記念みなと祭 ザよこはまパレード 国際仮装行列
開催日:2026年5月3日(日・祝)
主催:国際仮装行列実行委員会 
コース・距離:
キッズパレード(全長1.4㎞)
山下公園中央口⇒開港広場前⇒横浜税関前⇒新港橋⇒赤レンガ倉庫前⇒万国橋交差点

スーパーパレード(全長3.4㎞)
山下公園中央口⇒開港広場前⇒横浜税関前⇒新港橋⇒赤レンガ倉庫前⇒万国橋⇒馬車道商店街⇒伊勢佐木町1丁目⇒伊勢佐木町6丁目

規模:63団体、約2,800名が参加

関連イベント:「あいすくりーむ発祥記念イベント」チャリティイベント(5月9日開催、アイスクリーム5000個配布)

ザ よこはまパレード 公式サイト(横浜商工会議所) https://www.yokohama-cci.com/about/index.html

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大沢野八千代

1983生まれ。横浜の対岸の千葉市で、横浜ナンバーに憧れを抱いて育ったフリーランスの編集者・ライター。ハマスタでササカマにかじりついているところをテレビ中継で抜かれ、家族から指摘された過去を持つ。Googleマップのランクは7。

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